知るかぎりの宝石の名を
03
 トリオンキューブを自らの手足のように操り、敵を捕捉、包囲する。最近では手慣れたもので、そちらを操りながらイーグレットで目標を狙撃。えげつねぇ……というつぶやきが耳に届いたが、私はそれを気にも留めず、次の目標へ標準を合わせた。

 太刀川にコテンパンにやられて以来、私は自分のサイドエフェクトを使うことに対し抵抗をやめた。だってそうでもしなきゃあの男には勝てないもの。自分がここまで負けず嫌いだったとは知らなかったが、幼馴染には「昔からそうだ」と言われてしまった。そうかしら? 首を傾げれば呆れたように深くため息を吐かれてしまう始末。これ以上話が長引けばネチネチと小うるさく説教されてしまう。直観に頼らずともそうわかってしまうくらいには付き合いが長い。その上彼は不本意ながらもシューターとしての師匠である。また弱みを握られてしまった、と彼の去ったあとで私はやれやれと肩を竦めた。

 でも、勝つためとは言えイーグレットを使うことは何とも言えぬつまらなさを感じてしまう。トリオンキューブを扱う際はこうすればよいという正解はあまりない。自分の打てる手が多すぎて処理が間に合わないのだ。だから自分の実力が良く見え、実に楽しく、実に悔しい。誰よりも、もしかしたら私よりもという人間に詳しい幼馴染のことだ。それが分かって私をシューターに仕立て上げたのだろう。実に、腹立たしい。
 変わってイーグレットはというと、射程距離に秀でており、トリガーの性能によりもとからそれなりに的に当たる実につまらない武器。私の直感と合わせてしまえば外す方が難しいほどだ。初めはどうやっても当たるその武器に私の心は高鳴ったが、今となってはつまらないおもちゃでしかない。それでも使い続けるのは偏に勝つため。最近では太刀川の頭を、心臓を、トリオン供給器官を吹き飛ばすことだって容易ではないもののできることにはできる。
 これでNo.1アタッカーを容易に倒せるようになってしまったらどうなるのだろうか。
 また、私は私を嫌いになってしまいそうだ。

 自分勝手で、何でもできて、そんな自分が大嫌いなお姫様。
 ねえ、どうやったら私は自分を大切にできるだろうか。どうやったら、私は私の力を嫌いになれないだろうか。

 どうして私はこんなにも傲慢なのだろうか。本当に、反吐が出るわ。せっかく楽しいと思えたのに、せっかく、私は世間知らずで自分が一番だと思い込んでいただけだと思えたのに。
 そんな考えすらも世間知らずなせいなのかしら? ―――いいえ、私の直感は嘘を吐かない。嘘を吐くのは私自身。

 あぁ、なんて私は醜いんでしょう。

 まるでピエロのようだ。
20151014 ... 知るかぎりの宝石の名を 《title:as far as I know / 黄道十二宮》