基本的にの化粧は濃い。

 制服を着ていた頃は校則に縛られていたため素顔を知るものも多かったが、最近知り合った者たちで彼女の素顔を知る者は少ないだろう。

 だからこそ、勘弁してほしかった。

 長い長い口づけのあと、唇を乱すように角度をかえ何度も何度も唇を合わせる。

 さすがに息が持たなくなってきた。抗議の意を込めて太刀川の胸板を叩くも、「ん……」とどうにも色っぽい声を上げるばかりでやめてはくれない。挙句の果てには己の腹の奥が熱くなってくるのがわかり、顔を顰めたくなった。の直観も、このまま流されていればこのままコトに及ぶだろうと告げており、本格的にまずい状況となってきた。

 まさか会議室に連れ込まれる羽目になるとは思わなかった。

 ここ数週間、予想される侵攻の対策訓練だの、のSEでの対策会議だので驚くほど会うことができなかった。互いに立場ある人間だから仕方のないことといえど、会えるのに敢えて会わなかった、ということも彼の欲求不満をついているのかもしれない。これは暫く終わりそうにないな、とあきらめに近い感情を抱きながら、しかしこのままでは確実に化粧が間に合わない、とどうにか抵抗する。実は今日、化粧ポーチを本部に持ってくるのを忘れてしまったのである。トリオン体で帰ればいいか、とも思ったが、以前それをしたとき当真が出動と勘違いしてしまい、大変な目にあったのでもうやらないと心に決めていた。

 さてどうしようか。

 悩みながらも、このまま流されるのが一番良いとSEも言っている。SEの言うとおりにするのは今も嫌いだが、どうやら己が声を押さえれば人は来ないようだし、ここはもうあきらめるべきなのかもしれない。
20160212 … 昼に見る夢
20160515 tumblr再録