26. 星だから遠いのです
時折空を見上げ何かを思う姿は、まるでかぐや姫に恋をした男のようだ、と私は思った。
大昔の極東で語られた物語。竹から生まれた少女を御爺さんが拾い少女は美しく成長する。少女はかぐや姫と名付けられ、美しい彼女に多くの男が求婚する。だが月から迎えが来てしまい、彼女は月へ帰ってしまう。そんなお話。
かぐや姫はシオ。ソーマはそれに恋をした男だ。あんなそっけない態度ばかりとっていたソーマがこうも成長するとは、とサクヤと話したのはまだ記憶に新しい。
特異点となってしまったシオがお別れしたくない自分を連れて月へ昇る、というのもなんともかぐや姫らしい。ソーマとシオは悲恋のカップルだなと私の心はちくりと痛んだ。
私はシオが大好きだ。、、と拙い言葉で私の名を呼び一緒にいてくれた姿には妹か娘ができたようにも思えた。ただ、そんなシオとソーマが仲良くしているのを見るのはどうにも心が痛んだ。シオのおかげでソーマが死神と自分を責めることがなくなったのはとてもうれしい。でも、できることなら、私が、私がその役目を請け負いたかった。でもそれは私にはできないことぐらい分かっている。だからこそ心が痛むのだろう。
「遠いよ。シオ」
なんでシオが遠くに行ってしまったのだろう。
どうせ誰かが月に行ってしまうのなら、私が行きたかった。私が行ったら、ソーマは何か思ってくれたのかな? それとも私のことなんか忘れてシオと仲良くしていた?
考えることすらも嫌になってきた。こういう時は任務に出るのが一番だな。シオの大好きなゴハンでも取りに行きますか。