【前書き】
主は冬木の聖杯戦争(Fate/stay night)から平行世界であるfgo世界に流れ着いたみたいな設定で書いてます。ただのご都合主義でしかない。
七章のネタバレを含みますので、クリア済、もしくはネタバレ問題無しという方のみお願いいたします。
第七特異点、バビロニア。
最後のマスターである少年とそのサーヴァントである少女と共にレイシフトした先は、神話に近い世界で、語彙力の低い表現で申し訳ないが、私は兎に角「すごい」という感想を抱いた。
何がすごいって、とりあえず知り合いの少女を媒介として二人(?)の神様が召喚されたりとか、良く知る教師が虎だか豹だか良くわからないことになっていたりだとかしたら、「すごい」としか言いようがなくなると思うの。
あの二人―――名前を出しましょう。凛と藤村先生は一体何が起きてああなったのだろうか。
イシュタルとエレシュキガルに関しては女神と凛が混ざった姿だなぁ、という感想で済んだけど、藤村先生に関しては本当にわけがわからない。
けど、まぁ、そういうことが起こるのがこの世界ということでひとまず納得しておくことにしよう。
それよりも驚くこと、重要なことが他にあるのだから。
即ちウルクの王ギルガメッシュのことである。
彼は冬木の聖杯戦争で出会った我様英雄王とは異なり、『賢王』と呼ぶにふさわしいお方だった。
時折お茶目なことをしてくださったりもしたけど、すべてを見通し、導く王。私の知っていた愉悦を好まれる英雄王とは違った一面を彼は見せてくれた。
私が知っていたのは、ただの金ピカ―――といっては怒られるだろうけど、どちらかと言えば『暴君』という表現がぴったりあう英雄王だったために、賢王となった彼の姿には私は驚かされっぱなしだった。
「ギル、大丈夫? 愉悦探して来よっか? とりあえず深呼吸しとく?」
と何度言いかけたことかわからない。
さすがに言いませんでしたけどね! なんとか留めましたよ!
でもそんなことを考えてしまうくらい、私の知っているギルガメッシュと違ったんだもの。何度ドキッと心臓が音を立てただろうか。―――恐怖が原因で。
ギャップってありすぎるのも怖いんだなぁと私は知った。よーくわかった。
最終的には恐怖でない理由から心臓が音を立てたので、恐らく冬木の金ピカと再会したら私はそちらに恐怖を覚え心臓をドキドキ言わせるだろう。
さあ私はこの先生きていけるのでしょうか。乞うご期待あれ!
というわけでつまり何が言いたいかというと、
「冬木のギル様も良かったけど私は賢王陛下も大好きだよ。たまんない。素敵。一粒で二度おいしいってこういうことを言うのね!」
「うるさいぞ雑種」
ハートマークを浮かべて言った私に賢王は面倒くさそうに言葉を返した。
ばったり出くわした賢王に誘われるまま彼の部屋を訪れた私は、賢王と英雄王という、ある意味二人のギルガメッシュについて考え、このような結論を導き出した。
賢王はそれについて聞きたくて私を誘ったと思ったのにそんな素っ気ない言葉を返してきたものだから、やーんいけずぅ、とからかってやろうかと思った。きっとそんなことしたら私の命はないだろうからやめておいたけどね。
そのあたりは冬木にいた金ピカと一緒だろう。いや、むしろ付き合いが短い分、金ピカよりも先に堪忍袋の緒が切れるのは早そうだ。金ピカはいい加減になってくると私という女を理解してくれた。それまでに色々あったけどね……。
賢王はつい先日マスターが召喚に成功したばかりで、彼と私が直接話したのは片手で数えられるほどしかない。
それに対して金ピカは私がまだ冬木にいたころ、散々いろんなことをした。
正直今まだこうやって命があるのが不思議なくらい、いろんなことをした。そう、いろんなこと……いろんな……ことを……。どうして私、殺されなかったんだろう。ほんっとうに、不思議でしょうがない。
もう一度逢えたら聞いてみたいな。
賢王に聞いたら教えてもらえるだろうか。―――いや、無理だろうな。すぐに結論を出す。
賢王は『私』のことを知らなかった。正確に言えば、私という一人の女のことは知っていたけど、私と『ギルガメッシュ』の関係を、賢王は知らない。英雄王だろうが賢王だろうが『ギルガメッシュ』であることに変わりないのに不思議な現象が起きているものだ。
だからこそ私は英雄王と賢王を別の存在と考えてしまい、英雄王とは悪友のノリで話せるけど賢王の前では乙女モードのスイッチが入ってしまう、ということが起きてしまっているのかもしれない。
あぁ早く英雄王来てくれないかな。
いや、来たら来たで面倒なことになりかねないから、やっぱり賢王さえいてくれたらそれでいいや。