【前書き】
 体育祭小ネタ詰めとなります。安定の山も落ちもない。
 書きたいネタを書きたい部分だけ切り取って書いてあるので、恐らく「ほぼほぼツイッターでつぶやいたまんまじゃねぇか」ってツッコミが入ると思うので先んじてセルフで入れておきます。
 それからかっこいい御幸先輩はいませんのであしからず。





【騎馬戦】
「あれ、これって学年混ぜてんだっけ」
「そうだよー。男子全員参加の壮絶な戦いで尚且つ三学年合同だからもー悲惨!」

「でも敗れていく先輩たちって、素敵……」と目を輝かせる彼女はやっぱ頭おかしいなぁと内心顔を引き攣らせる。前に「類は友を呼ぶんだな……」って倉持が言ってた気がするけどそんなことは覚えていません。

「哲さんの騎馬、めっちゃ将軍! って感じがするんだけどそれ私だけ?」
「安心して。うちらも大体おんなじこと考えてたしむしろ野球部マネのお墨付きもらえてうれしいから」
「わあ、ありがとねぇ」
「こちらこそありがとう……!」

 固い握手を交わし、壮絶な戦いへ意識を戻せばうちの部員による騎馬がいくつも見つかってしまった。
 あらあそこの騎馬の上沢村じゃない、その下には金丸……ほんとお世話係になってるのね。まじで頑張れと再び応援をしておく。
 あとは、あーゾノはやっぱ下か。まぁあの男を上にできるのなんて下が野球部の場合くらいよね。あらやだノリ上なの!? 沢村にも言えることだけど騎馬戦で指を突き指しました〜なんてことにならないように細心の注意を払ってもらわなくちゃならないわね……。

 にしても。探せば探すほど次々野球部の騎馬が見つかってしまって、あれぇおかしいなと首を傾げる。

「これって体育祭よね。私たち間違って野球部の交流運動会みたいなのを見てるわけじゃないよね」
「ごめんそれたぶん誰も否定できないから言わないで。つーかお前が言うなよ野球部」

 だってさぁ! と返したくなったのをぐっと抑える。確かにそれを野球部が言っちゃいけなかったわね。
 でもどうしてこんなにもうちの男どもは体育祭にガチ参加してるのかしら。ちなみにばっちし2−Bの野球部も騎馬戦に参加しています。すっごく不安だけどね。倉持は運動関連ならば何事もそつなくこなしているし全く心配はいらないのだけど、問題は、御幸よ。あの人上かしら、下かしら。身長はそれなりにあるし部活で足腰鍛えてるから下になりそうなもんだけど、でも野球部の顔だからな……。応援合戦ではこれと言って活躍は見られなかったけれど、もしかしたら男子の花形種目である騎馬戦では上に載って将軍哲さんと戦うなんてこともあるんじゃ……! そう考えたらだんだん楽しみになってきた。無様に敗れるようなことにはきっと(倉持が何とかしてくれると思うから)ないだろうし、けがをするほどあの人は馬鹿じゃない。あらこれ今こそ兄貴の一眼レフが役立つじゃない!?
 ―――結果は残念なことに私の期待を裏切るものだったとだけ言っておきましょう。あーあ、大将御幸見たかったなぁ。けど上に春市を持ってきての野球部一・二年騎馬ってことなら、まぁ、仕方ないか。





【男子障害物競走】
「ねえ、あれどう思う?」
ちゃん現実から目を背けちゃだめよう」
「そうね、だめよねぇ…………でもさァ」
ちゃん、あのね、うちのクラスみんな同じこと考えてるからね」
「じゃあそれ逆に言ってもいいよね」「ちゃん」

 被せるようにして言われた言葉に唇を尖らせる。別に言ったっていいじゃんか。

「御幸が網に引っ掛かって何分たった?」
「だからぁ!」
「言うなって言ったじゃんか、ほらあっちで瀕死の子出てきてるから!」
「その場合何よ、死因:笑いすぎとでもカルテに書けばいいの?」
ちゃん!!」「ちゃん!!」

 あらゆる方向からの文句の言葉と笑い声に耳をふさぎながら、「なんだよこれ!」と叫びながら頑張って網を抜けようとしている御幸に目を向ける。「御幸くんかわいい〜」だのと言ってる子が多い中、うちのクラスは全員が「御幸くん何やってんの……」「野球してる時のかっこいい御幸一也は見られないのね……」だとか、あとはもう開き直って笑っている子しかいない。ちなみに私はそのどちらにも属しておらず、自分の彼氏の不甲斐なさに頭を抱えていますよ。

「おいこらお前後で覚えてろよ」
「そのセリフを口にするのは網から抜け出てからにしてくださいキャプテン」

 そんな体制で言われてもなんにも怖くないから……。ほんっとうに悲しすぎる。どうしてあの人あそこまで野球以外なにもできないのかしら。痛む額を押さえながらもどうにも御幸から目を離せなくて、やっぱ私一也のこと好きすぎるなぁとしみじみ考えてしまう。あんなに格好悪いことになっていても結局一番見てしまうのはあの人なのだ。―――もうちょっと活躍してほしいなぁとは思うけどね。





【借り人競争】
「あれ、貴方借り人競争でないの?」
ちゃんに笑われるから最低限しか種目入れてねぇよ」
「やぁね、笑ってないわよ私。ねーみんなそうよね!」

「そうだね、ちゃんむしろ頭抱えて嘆いてたもんね」
「あとうちのクラスはほとんど笑ってないから安心していいよ御幸くん」
「そうそう、いつもの御幸くんとだねえって話してたくらいだから」

「やめて! 貴方たちの言葉に御幸が次々ダメージを受けて死にそうになってるからやめてあげて!」

 蹲ってしまった御幸の頭を抱きかかえながら叫べば、何かのコントと勘違いした周りのクラスメイトが一斉に笑い出す始末。コントじゃなくってマジな発言だっつーの。
 こうやってクラスの子と話しているといかに私や御幸の校内での評価が可笑しいものなのかがわかるわね。一応私たち結構校内だとイケメーンとか美人ーとか言われてんだけどな。いやこういう扱いの方が気は楽だけどね、でもね、こう、ギャップというか、扱いの雑さに御幸が死にそうになっているのとかを見るとすっごく複雑。

「あーもうほら切り替えて応援しようよ。次は我らがチーター様の活躍みたいだしさぁ」

 しっしと追い払うように手を振れば「ちゃんって御幸くんのことになると過保護だよね」と言われてしまった。別にそんなことないと思うんだけどなァ。

 そうこうしているうちに倉持がスタート位置についた。御幸が出ていないんじゃ倉持の応援をするしかないよなぁと隣にその件の御幸を携えて最前列まで出る。直後パァンというピストルの音と共に走者が一斉にスタートを決めた。の、だが。

「いやぁ……早いな」
「さすがチーターよねぇ」

 遠くから「チーターの化身がおる!!!」という沢村らしき叫び声が聞こえてきたけど、確かにそうよねェと納得してしまう足の速さだ。他の選手をぐんぐん引き離して、既に借り人の書かれている紙を手にしていた。やっぱ走る系の種目は倉持に任せるのが一番だわ。―――御幸も、ただ走るだけならすごく活躍できそうなのになぁ。そう考えるとどうして借り人競争にでなかったのかがわからない。ただ人を見つけて走るだけなのに。ねぇどうしてなの、そう尋ねようとした次の瞬間。

「なぁ
「なにさ」
「倉持……あれどっち向かってきてると思う?」
「―――やだいま目があったんだけど」
「こっち来てるよな」
「来てるわね」

 どうして? 二人顔を見合わせ首を傾げたところで、少しばかり息を切らした様子の倉持が私たちのもとへ到着した。借り人がもしかして私か御幸のどちらかだったのかしら。「ねぇどっちがついていけばいいの?」その声は音となることはなかった。

「お前ら行くぞ!」
「どっちがだよ」
「話聞いてろお前『ら』っつっただろ!!」

 そう吠えるなり倉持は右手で御幸の、左手で私の手首をつかみ、チーターという代名詞にふさわしい走りを見せてくれた。ついていくのにやっとな私は時折足を縺れさせてしまったけれどどうにか転ぶことなく走り続ける。

 というわけで一着でゴールテープを三人揃って切れば、出張実況なのかマイクを持った男子が私たちの目の前に現れ。

「二年野球部仲良し三人組、見事一位でゴールです! さて彼らの関係は三角なのか否か!? 早速聞いてみたいと思います!」
「んなわけあるか!!!」

 よく吠えるなぁ、といっそ笑いたくなっていれば倉持を挟んで反対側にいる御幸は思いっきり笑っていた。じゃあ私も笑っちゃおうかなって思ったけど、その前に聞きたいことがあった。

「お題、なんで私たち二人だったの?」
「あー確かに。なに、カップルでも連れて来いってお題だった?」

 にやにや笑う御幸には悪いけど絶対それはないわよと内心ツッコミを入れながら、倉持の出方を待つ。
 すると倉持は面倒くさそうにしながらもお題の書かれた紙を私たちに見せてくれた。そこに書かれていたのは―――『変な人』
 思わず目を見張り何度も見返せば、隣で御幸も眼鏡を拭きなおして確認していた。けれど書かれた文字は一向に変わって見えないし挙句の果てには「変な人って書かれてんだよいい加減理解しろ」と倉持に言われてしまって。

「何でよ!」
「何でだよ!」
「お前ら二人どっちにするか悩んだ結果だよ諦めろ!!」

 ふ、二人どっちにするか悩んだぁ!? ちょっとそれ本当にどういうことよなんでよ! いくらなんでも酷すぎる! クラスの方向からは笑い声が響いているけれど本当にひどすぎる!!! これならまだ「三角関係の野球部三人組」とか言われる方がまだましよ!!! 御幸と揃って文句を言うも「煩ぇ! 変じゃねェと思うならその証拠を出してみろ!!」とかなんとか吠えられちゃってあわや大乱闘の始まりか―――と思われたところで神の一声ならぬ亮さんの「いつまでやってんの変人三人組。いい加減邪魔なんだけど」という爽やかながらなんとも恐ろしい言葉を掛けられてしまって。
 さぁみんな仲良く戻ろうか、折角一位取れたんだしね! 顔を引き攣らせながら自分たちの席へ戻ることになりましたとさ。





 そこで午前の部は終わり、お昼休憩を挟んで次は女子の応援合戦からスタートだ。
20160921 ... 体育祭小ネタ詰め午前の部
 というわけで午後に続きます。午後はもうちょっと御幸に活躍してもらう(予定)なので許してください……。(予定は未定)