雲一つない秋晴れの空にいささかうんざりしながらも、まー体育祭の競技が始まったらテンションあがって結局楽しむんだろうなァと自分の性格を冷静に分析する。
 それに今年は部活動対抗リレーで御幸にチアの格好をさせるってことも決めてるしね! 昨年恥ずかしい思いをしたのは私だけなく彼もだが、それでもあいつが私と出場すると言ったからあんな目にあったと私は考えてるので甘えさせません。今年のリレーについては倉持に相談したところ快く―――つーかめちゃくちゃ楽しそうに「任せろ」という心強いお言葉をいただいたので衣装の心配などは全くしていないし御幸がリレーをほっぽって消える心配も皆無。持つべきものはこういうことを一緒に楽しめる友人よねェ。

 そうなってくるともう出場競技で何が何でもテンションを上げて、午後一番にある応援合戦に備えようじゃありませんか。青道の伝統で、午前の部の始まりに男子が景気付けの応援合戦を、午後の部の始まりに午前の疲れを吹き飛ばす女子の応援合戦をすることになっていて、私はその午後の応援合戦で中心核を担うことが決まっていた。そりゃあ皆と馴染めているのは嬉しいわよ。この顔のせいでいらぬやっかみを受けることだって多いし。でもさぁ、ここまで馴染みたくなかったわ。三年のお姉さま方を差し置いて私がセンターって、ほんとないと思うのよ。でもそれを三年野球部の先輩方に相談したところでどうにもならないのは分かっているのでおとなしく――御幸に言わせてみれば散々喚いてから――諦めることにしました。もともとダンスは得意な方だし、それなりにアクロバティックなことだってできるから、確かに応援優勝を狙うなら私を使うってのは、上から目線で申し訳ないけど悪くない判断だと思うしね。

 それじゃ、午前の種目を楽しむことにしますかね。まずは男子の応援合戦から。





 ―――正直に言わせていただくと、大体予想はついていたわ。クラスメイトの女の子たちがきゃあきゃあ言っているのに顔を引き攣らせながら冷静に各チームの応援を見る。どこのチームも野球部が中心になってるなんて、ほーんと予想はしてましたよ。してましたけど、まさか当たるとは思わないでしょ……。
 順番に説明していくと、Aチームは哲さんをリーダーとしてまとまりのある応援。他の部員はそれほどこういう行事で騒ぐ人たちじゃあないけど、野球部のキャプテンがいるってだけで部員以外が盛り上がってるみたいね。

「ねねちゃん、結城先輩のサインってもらえるかな!?」
「あっそれ私も欲しい!!」
「あの人サインとか書かないと思うから写真で頼むわ」

 オッケー!と軽やかな返事をくれるクラスメイトたちの姿に、やーっぱキャプテンって人気よねぇとPCの画像フォルダの中身を思い返す。―――よし、稼げるだけの写真はあるわね。応援合戦の写真も兄貴に頼んでおいたし、これで暫く情報収集のため写真には困らなそうね。


 そして我らがBチーム。こちらは団結式でも中心にいた純さんをメインに構成している。にしても増子先輩が学ランで旗を振る姿が様になりすぎてて困る……。「トトロみたーい!」と騒ぐ女子たちには「性格も優しいいい人よ〜」とだけ伝えておいた。
 つーかまさか亮さんと春市の小湊兄弟をうまく使うとはね! センターに純さん、それを囲うように亮さんと春市が両サイドにでてくるという演出は最ッ高に決まってるわ!
 以上くらいしか何も言うことないんだけどどうしよう……いや確かに御幸も応援してうみたいだけどさ。しかもあの人一応私の自慢の彼氏ですけどさ。でもさ。―――吃驚するくらい隅にいるのよね。何やってんのよもっと真ん中出てこいよー! これじゃ何のために兄貴に一眼レフ持ってこさせたかわかんないじゃない! ほぼほぼ貴方の写真が欲しかったがためなんですよ!!!! 勿論情報収集も大切だからそのためでもあるわよ。でもさでもさ、彼氏のかっこいいところを記録に残したいじゃない! そういう女の子らしいところはちゃんとあるのよ捨ててないのよ! なのにさぁこの仕打ちって何さ! んもーこれは御幸が戻ってきたら一発お見舞いしなきゃならないわね……。どーして前キャプテンはセンターにいるってのに現キャプテンは端にいるのよ! ほんっといみわかんない。


 応援合戦は自分のチームの前のチームが応援しているときは待機所にいるんだけど、それが終われば各々席に戻って良いことになっている。というわけでCチームの応援が始まるよりも前に戻ってきた御幸に(理不尽な)一発を決めてから二人並んで応援を見ることにする。「ちゃんなんでそんなキレてんの……」という呟きは無視よ無視!


 Cチームは三年の丹波さんが静かな代わりに何故か、何故か、沢村が中心にいる。あいつ何やってんのよ……。ゾノが出てくるのかなぁと思ってたってのに、まさの沢村。

「一年でセンターやるのかぁ」
「ほんっとあいつ裏切らねェよな!」

 はっはっはと軽く笑った御幸につられて私も声を上げて笑ってしまう。沢村の横で金丸がげっそり疲れた気な顔をしているけど、うん、しかたないわよね。がんばれーと内心応援しているうちにCチームの応援は終わっていた。


 そしてDチームとEチームなんだけど、この二つは前半の三チームとは異なり全く野球部が前面に出ていない。隣で「クリス先輩……」とクリス先輩大好きっ子が嘆いていたけど、正直私も同じ気持ちだ。

「クリス先輩の写真撮ろうと楽しみにしてたのに……ッ」
ちゃんそれ何に使うつもりなのかあとで報告な」

「言えるわけないでしょ!!」と思わず叫んでやれば「んなことにクリス先輩巻き込むな!」と返される。やだもうこの男ほんとクリス先輩好きすぎでしょう……。

 呆れているうちに男子の応援合戦はすべて終わってしまい、あーこういう落ちになるのかァと溜息を吐く羽目になる。それもこれも御幸のかっこいいところを見れなかったせいよ! 完全なる八つ当たりから御幸の頬を抓ってやれば「ちゃんせめて何か言ってからにして」とかなんとかふがふが言ってきたけど、もういい知らない!
20160920 ... 君だけの熱だったのに 《title:as far as I know / 黄道十二宮》
 あまり落ちがついていないような気もしますが、嬢的にはお前の応援楽しみにしてたってのに目立たないから全然盛り上がれなかった、だから他の人でテンション上げようとしたけど貴方じゃないから無理だった、んもーなんなのさ!!っていう本当に八つ当たりから「もういい知らない!」になります(解説)